抱擁
二十二世紀の愛のかたち
月の光を忘れないで 坊や
抱擁 / カネコアヤノ
きみの名前を知っていても
きみのアカウントを知っていても
きみの普段のツイートを読んでいるとしても
きみの人生は きみだけのもので
喜びも 悲しみも 疲れも きみだけもので
わたしは きみのことを ぼんやりとしか
わからない
それが何年の仲だとしても
濃い繋がり 薄い繋がり
ネットワークを通じた繋がりだとしても
きみのことは きみだけにしかわからない
そしてわたしのことは
わたしだけが知っている
近しい共感することはできるけど
完全に理解することは難しい
きみのことを知っているのは
きみだから
きみが自分のことを 愛せない夜が
突然やってきたとき
遠くから心が痛むことが あったりする
こんなにも きみって素敵なのに
そんなところも素敵なのに
たとえ悲観的だとしても 不器用だとしても
優しくなれない日があったとしても
選択を誤って
誰かを傷つけてしまった時があったとしても
その不完全さが 愛おしかったりするのに
それに悩み 落ち込み 反省してるきみが
どれだけ 素敵なことかと
気づいて欲しいのにと
それすら出来ず 気づかず
明日も誰かを意図的に傷つけようとする人が
この世に溢れているのに
ただ うずうずと している
わたしがいる
認めなくて良いから
拒絶しないで
許さなくて良いから
否定しないで
ただ今日も
きちんと起きたことが えらい
仕事や学校行こうとしてるの えらい
ご飯の準備をしたり
別にしなくとも
コンビニでおにぎりひとつ買ったり
ファミレスなどで外食でも
生きるために食べてるの えらい
好きなことを好きと言って
いやなもんはいやだと言うのも えらい
何もしなかった日だとしても
身体と心を休めることを優先したの えらい
わたしも わたしの身近なひとたちも
今日も 明日も こつこつと頑張っていて
わたしも頑張れちゃうな
なんてそんなことをふと思った
分からなくても 知らなくても
それだけでいいんだって思う
おやすみ、また明日
物理的な距離で
きみのことを抱擁しに行けないから
言葉で抱擁するよ
少しでも安らげたらいいな できてるかな
きみの明日のほんの一秒でも頑張れる
力になれたらいいな
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